旅する地域考|AKIBI複合芸術プラクティス Day 4 最終日

注:今回このブログの記事を見学先のワイナリーに送ったところ、いくつか事実と違う記述があるとご指摘をいただきました。
三ヶ田さん大変申し訳ございませんでした。都合よく記憶を補完してしまったようです。該当部分を訂正し、勘違いの部分は注釈をつけて掲載させていただきます。ああ〜、記憶捏造してるわ〜。


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忙しさと日常にかまけてずっと書かずにそのままだった、昨年夏に参加したAKIBIのアート合宿の残りの日についてレポします。ううう、遅くなってすみません。すでに旅する地域考「冬編」も終わっとるっちゅうのに。。。
過去記事はこちら。
junjunscience.hatenablog.com
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銭川温泉での滞在も今日が最終日。
前の晩に岩井さん他みんなと色々話す。今回の講師でもある相馬千秋さんが愛知のトリエンナーレに関わっており、「表現の不自由展」のトラブルで日本中が沸いている中、名古屋に張り付きになっていることなどを聞く。まさにこの期間中に起こった出来事で他人事ではない感じ。色々な思いを抱えつつも、夜は涼しい風が吹く中、真夏のオンドル(これがまた気持ちいい)に寝転がり就寝。
4日目の今日はこの銭川温泉の娘さんで宿を切り盛りしている阿部湖十恵さんのお話を伺うところからスタート。曰く「進学後は東京で生活していたが、ある時を機に戻ろうと思った」「ここで生活をすることが大事だと思っている。」などなど実感のこもった話。面白かったのは、朝ごはんの山菜などはおばあちゃんが採ってくるのだがその場所は絶対に教えてくれない!ってこと。うーむ。笑えていいエピソード。今日も晴れていい天気。朝ごはんをいただく。こんな感じでした。美味しかった。
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3日間お世話になった銭川温泉に別れを告げバスで向かう先は、山葡萄でワインを作っている「このはなワイナリー」
秋田県鹿角市のワイナリーこのはな【直営】Winery Konohana|ステンレスタンクで作るピュアな果実味が魅力のワイン
の葡萄畑。ワインの農園て日本だと甲府や十勝なんかが有名ですが、それにしても山葡萄のワインって聞いたことない。楽しみに向かった先には素敵な風景が広がっていた。
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農園にはワイナリーのオーナー三ヶ田(みかだ)さんが僕らを待っていた。「ささ、コッチです。好きにみてください。」とカジュアルな雰囲気の方で一同農園の中に入りすでにたわわにみのっている山葡萄を眺める。頭より少し高い位置にある葡萄棚越しに差してくる夏の日差しに照らされた山葡萄は「美味しいワインになりまっせ!」とばかりに堂々としており。この山葡萄はヤマソービニオンという品種で、山梨大学で交配、品種登録された日本品種。日本ヤマブドウカベルネ・ソービニオンを掛け合わせた「山葡萄交配種」とのこと。
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右側に写っているのがオーナーの三ヶ田さん。
「ま、ここはこんな感じで。時間まいてるんで醸造所の方へ行きましょう」と促され、車で醸造所へ移動。鹿角の街中にあるパチンコ屋を改装した醸造所へ。表の看板を取り外しただけの一目で「パチンコ屋だな」とわかる建屋のなかはがらんとしていて、タンクや機械が無造作に置いてある。ぶどう作りから醸造、そして販売までなさっているということで独力でやっている「インディーズ感」のようなものも漂ってくる。葡萄から果汁を絞る器械なのだろうか、大きなプレス機のようなものもあり、普段飲んでいるワインのできる様子が垣間見れておもしろい。
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f:id:junjunscience:20190804120412j:plain手前の赤いのはワインにコルクの蓋をする道具。奥のコンプレッサーみたいなのはなんだったけな?
「ま、こんな感じで」とそっけなく全体を急ぎで紹介する三ヶ田さん。隣にある元銀行(or信用金庫?)の金庫を使ったワインの貯蔵所も興味深くいろいろ話を聞きたかったが、なぜか急かし気味。促され向かった先は道路を挟んだ向かいにあるワイナリーの店舗。一同店舗の中に入るとフロアのテーブルにグラスが並べられている。ここでさっきみた山葡萄のワインを試飲しながら、ワイナリーのオーナー三ヶ田さんにお話を聞く。みんなが店内に立ち並ぶ中おもむろに脇にあるレコードプレイヤー(割と高級品っぽい)にジャズのレコードを乗せ針を落とす。ここからどうやら彼の時間が始まっているらしい。そして自らもワイングラスを持ち一口ゴクっと飲んでから、語りは始まった(注釈:ゴクッと飲んだように見えたが、実は口に含んで陰で吐き出していたとのこと。あくまで雰囲気づくりのためで、レクチャーに支障がないようにしていたみたい)
曰く、元々はこちらの出身だったが、東京に出て音楽と芸術に明け暮れた青春時代の話に始まり、地元に戻り独学でワイン作りを始めるに至るまでのストーリーはさながら、大河ドラマの一代記のようでもあり。っていうか、語りながら彼が奥様と一緒に「ささ、遠慮なくやっちゃってください!」とガンガンワインを勧めるのね。こっちは「レクチャーと試飲」だと思って神妙にしてたらポンポンとワインの蓋が開き、テーブルにはつまみも並び出す始末。これがまた高級そうな缶詰だったり生ハムだったりチーズだったりとワインにもってこいのつまみが並ぶもんだから「それじゃ遠慮なく」なんてムードに突入!まだ午前中!
みんなにお酒が回ってきてご機嫌に賑やかになる中、三ヶ田さんのレクチャー、というより「トーク」は絶好調に。「いやあ、東京にいるときにジャズ喫茶に行ってジャズにハマってさあ、いろいろ聞くうちにもっとやばいのに突き当たったわけよ」「哲学書なんかにもハマってたんだけど、同じ頃舞踏も始めてさあ、そういうのの真っ盛りの時代だったからねえ」
三ヶ田さん!舞踏やってたんかい!
なんとなくそうじゃないかなという雰囲気で様子見だったが、舞踏やってたって告白あたりから、もうこれはボキの担当だなと、それまでおとなしく頷くのみだった合いの手にギアを入れる。「先輩!さっき言ってたやばい音楽ってなんすか!」「いやあ、ちょっとそれはねえ」「先輩!先輩からふっといてそういうのなしっすよ!聞かせてくださいよ〜」「しょうがないなあ。じゃあ」ま、ここまでがワンセットで、ごそごそと棚から引っ張り出してきて、さっきかけていた渋いジャズに代わりかかったCDからは熱いシャウトが。ジェームズ・ブラウン!ファンク!(注釈:僕の勘違いでPファンク系の音でした。三ヶ田さんもはっきりとは覚えてなくて「おそらくパット・ファンクションとか13cat'sとかジェシー・ジョンソンとか」と言ってました)なーるほどー。彼のファンクへの想いが伝わりちょっと胸がきゅんとした。熱い話が続く中、山葡萄のワインだけでなく、赤、白共に数種類のワインが振る舞われ気付くとクラブのようなノリに。店の棚には哲学書なんかも置いてあり文化の発信もしていきたい想いに溢れており。
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トークからそれぞれのテーブルでの話に花が咲く。その間もワインがぐびぐびつがれ、美味しいおつまみがボンボン出てなかなかのノリになり、表に出て飲む人も出始め。そのまま流れでお昼休憩となった。三ヶ田さんの「いかにして山葡萄のワインをつくるか」なんて話や「地元に戻ってきて」なんて話も、大変に興味深く、もっと聞きたかったなあ。
お昼休憩を挟んで午後は、大湯環状列石万座遺跡へ。縄文時代の遺跡で住居跡や環状に石が並んでいる跡が残っていて、日本のストーンヘンジなんて呼ばれていたりも。解説を聞きながら回っていたのだが、午前中からしこたま飲んだあげく、8月の日陰のない炎天下を歩き回ったもんだから、一気に酔いと疲れが回ってくる。お話を聞くのもやっとの状態。写真も一枚も撮っておらず。場所自体はいい雰囲気で遥か昔からこのような営みがあったのだなあと感慨深くもあったのだが、、、。
そんなこんなでキャラバン工程を終え、少し早めに宿舎入り。そこで全体ミーティングを行い、それぞれ小グループに分かれ今まで見てきたものや感じたことをメンターを交えてシェアする。「様子を見ながら全てのグループに混じってください」と言われたので、時間を見つつ、グループを回る。正直この4日間で通り抜けてきたもののボリュームが多く、話をまとめるというよりは、再確認という意味合いが強かった気がするが、参加者たちはここから後半戦でさらに5日ほど滞在してリサーチを続けて発表に向けていくわけで、現時点では再確認がとりあえずというところだろう。
グループでの話し合いを終えて全体の総括へ。ここで、メンターたちともお別れになるのでご飯を食べながら最後の交流を。参加者の皆さんはすでに後半の滞在に向けて計画を練っており。今まで回ったところを再訪する人、近所をめぐる人、インタビューを計画している人、デッサンを始めている人などなど。それぞれに一夏の真摯な取り組みに向かっている様子に感動。僕のお役もこれにて御免なのでみんなと挨拶を交わしホテルに戻った。
いやあ、大変に濃いキャラバンでしたね。これを残りの5日間でまとめなん等かの発表に向けていくのは大変というか無理!でも一度まとめることによって見えてくるものがあるだろうし、終わってからもずっと残る体験になると思う。2年とか3年とか経たのちにまた思うこともあるだろうし。参加者は素晴らしいものをもらったんじゃないでしょうか。僕もメンターとして関わらせてもらい大変に有意義な時間となった。すでに冬の旅考も行われており、継続的に続けていきたいと話していたので、もし興味がある人は一夏を(または一冬を)、かけてみるのもいいのではないでしょうか。また参加者、メンター、プロジェクトチームの皆さんに、いつかどこかでお会いできる日を楽しみにしています。(終わり)