旅する地域考|AKIBI複合芸術プラクティス Day 3-2

尾去沢鉱山での印象的な体験を後にしつつ、次なる目的地へ。次は道の駅おおゆへ。
https://yunoeki-oyu.jp/
そこの広場で僕のWS。当初はここでレクチャーぽいことをしようかとも考えていたのだが、キャラバンで講義やレクチャーが多いので、体を動かしつつ、折々に話を入れていくという、いわばいつもやっているようなスタイルでのWSを。
芝生が気持ちよく風も気持ち良い。いい具合に屋根を設けてくださっていたので日差しも気にならないので、これは思う存分楽しもうと裸足になるところからスタート。みんないそいそと靴を脱ぎ、芝生に座り互いに足をマッサージすれば、ウヒャアと声が上がる。開放的なロケーションも相まって笑い声が絶えない。ブラインドウォークをここでも試し、より広い開放感を感じてもらった後に「ピクチャー」というワークを。これは一つのテーマで一人一人が舞台に立っていき、全体で絵を作るというワークなのだが、一人入るごとに話が見えたり意外な構図が見え始めたりと、なかなかに面白いワークで、場所やスタイルを変え様々なWSで行ってきた。ここでは二つのグループに分けて「温泉」と「鉱山」というテーマでそれぞれ絵を作ってもらう。テーマを発表した時に「えー!」「うー!」とか声が上がる。あまりに直球なテーマゆえ頭を抱える参加者もいたが、こういうのは変に気を使い「取り組みやすいテーマを」なんて考えず、思い切ってベタな方が良い。取り組んでみるとみんな「えー」とか悩みつつも、アクティングエリアに入るときは一つ気持ちを切り替えて入っていく。これも一つの本番なわけで、そういう場に飛び込む前の一瞬のテンションはプロアマ問わずとてもいい瞬間で。そして一人一人エリアに入っていきだんだんと絵が立ち上がる様子はいつもながら毎回スリリング。登場人物を演じる人あり。背景になる人あり。何だろうと意味不明な立ち方をする人もあり。そしてその人をうまく使いつつ新たな絵を描く人もいて、本当にドキドキさせられる。大盛り上がりで二つの絵を作り終えた時に、今朝一番で講義をしてくださった芹沢さんが「フェスティバルってこういう感じなんだよね」と一言。「フェスティバルって最初はわかんなくて、やっているうちにこんな感じでだんだんと輪郭が見えてくるんだよ」と大変に示唆に富む言葉を続ける。数々の大きなフェスティバルをキュレーションしてきたディレクターの心の内を覗くようなコメントに一同感銘を受けた。開放的なロケーションの中、やんやの盛り上がりでWS終了。僕のWS経験の中でも大変に印象的な時間となった。
「次の会場へ急ぎます!」と促されご飯の時間を変更し次の場所へ向かう。今日のハイライトである康楽館へhttp://kosaka-mco.com/
ここは鹿角市の小坂鉱山の娯楽施設として1910年に建てられた芝居小屋。鉱山に務める人々やその家族の娯楽の殿堂だった。現在も現役の芝居小屋として動いていて大衆演劇から歌舞伎、演歌の歌手のコンサートから映画の上映まで様々な催しが開催されている。入り口から堂々たる雰囲気で川のほとりに建っているロケーションといいベルリナーアンサンブルにもタメを張る佇まい。f:id:junjunscience:20190803181724j:plainいやん!アガる。劇場はこうでなくちゃ。世のクソみたいに建ってる文化会館はここの爪の垢でも煎じて飲めや!(はい久しぶりに出た)てなことを言いたくなるくらい素敵なお姿にすっかり一目惚れ。
ここで去年このキャラバンに参加したアーティスト佐藤朋子さんが、秋美のプロジェクトでレクチャーパフォーマンス作品を上演し撮影を行うとのことで、そのシューティングに同席させてもらう趣向。始まるまでのわずかな時間でお弁当を食べる。川のほとりで食べるご飯は幕内弁当。まさこのシチュエーションにふさわしいご飯で、開演前の盛り上がりも十分。中に入り撮影スタートを待つ。f:id:junjunscience:20190803181832j:plain
始まった作品はレクチャーパフォーマンスと題している通り、この辺りの鉱山にまつわるエピソードと康楽館そのものの歴史を交えて語っていくが、それがだんだんとフィクショナルなものも混じってくる。いわば本物の芝居小屋の中で虚と実が混じっていくような構成になっていて大変に興味深い。最後は「カリガリ博士」の上映につながり、見ているこっちも虚構の中に取り込まれるような感覚を覚える。かなり巧妙な入れ子構造になっていて、だからこそこの空間で上演することが必要だったんだなとわかる仕掛け。
しかしながら見ていて全く別のことも思った。この古い劇場の迫力がとても強いんだよね。昔ながらの芝居小屋で良くも悪くも強いカラーがあり、桟敷から見ていると演目を選ぶなと思った。ただ演目を持ってきてのっけても食い合わせの悪いものがあるというか。こういう場所に会うのはやっぱり芸術ではなく芸能、それも伝統芸能だろうなとも思ったり。そんなこんなで場所の磁場がとにかく強く、色々考えながら見ていたので、今回の趣旨である「作品の素材作りのための撮影」という部分を途中からすっかり忘れていたことも事実。アフタートークでマイクを振られ「ここに合わない感じがする」なんてトンチンカンなコメントをしてしまい、作者から「あくまで素材作りの撮影で元々別の場所で発表の予定です」と話を戻される始末。とにかく最終的なアウトプットを見てみたいと思わせる試みでした。
康楽館の外に出ると既に闇。夜風もいくぶん涼しくなっており、すぐそばを流れる川のせせらぎが優しく響いていた。