旅する地域考|AKIBI複合芸術プラクティス Day 2

秋田県鹿角市は秋田の内陸部で大館市の隣にある。僕は今回来るまで全く知らなかった。ここいらは鉱山が多く、温泉も豊富で地球からの恩恵を受けて街が発展してきた歴史がありそのあたりを巡るというのも今回の旅のテーマ。
一晩明けて二日目の今日は、まず次の拠点の銭川温泉
https://www.zenikawa.net/
へ移動。

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銭川温泉 
荷物を置いて今日一つ目の見学場所「後生掛温泉」へ。
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こちらは硫黄の匂いが漂う温泉地で八幡平の山あいに位置した温泉で湯治場にもなっている。入り口で待ち合わせ時間を確認し各自自由行動。硫黄の匂いがする遊歩道がずっと奥までつづいており、ずんずん進む。f:id:junjunscience:20190802102703j:plainすぐに渓谷のような谷というか崖のような場所に出る。下ではボコボコいって温泉が湧いていたり硫黄のガスが噴き出していたり。硫黄の匂いがすごい。これが崖の様子。
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この山のてっぺんに十字架のようなものが立っている。アップで撮影してみると。
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こんな感じ。ちょっとはげかけた山肌と十字架のコントラストは「ホーリーマウンテン」を思わせるような最果てのイメージもしてきてちょっとこわいが、後で解説を聞くとこの山を開いた人がクリスチャンだったらしく、山の上に十字架を掲げたんだと。温泉地に十字架ってかなり違和感があり印象的な風景だった。f:id:junjunscience:20190802093902j:plainf:id:junjunscience:20190802094326j:plain
奥に進んでいくと硫黄の匂いが強くなってくる。途中で気持ち悪くなったくらい。遊歩道は山と谷を縫うように作られていて高いところと低いところがあるのだが、低いところが露骨にガスが溜まっていて匂いがきつい。遊歩道のガードを越えて源泉に近づくことは危険、と書いてあったが、十分にその危険性を感じる。歩いていると急にひらけた場所に出る。大湯沼という沼が一面に広がる。
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あ、黄泉の国に来ちゃった。とでもいうような地獄めぐりの果てにある、このend of the worldな光景は、なにか記憶の奥の原風景を見たような気にさせる。周りも静かでただただ温泉の湯気だけが漂っている。ぼーっと見ているとどこかへ連れて行かれそうな感覚は、ちょっとほかにない。ずっと見ていたい気がしたが、あまり時間もないのでと、後ろ髪を引かれつつそろりと戻る。遊歩道の入り口に温泉があったのでものは試しと、その温泉に入る。硫黄泉で7種類くらいあったかな。泥の風呂もあって底に泥が溜まっていた。ゆっくり入りたかったのだが、次の予定がありいそいそと湯船を出る。
次の見学場所も温泉で玉川温泉https://www.tamagawa-onsen.jp/
こちらは硫黄の源泉地のそこここで岩盤浴ができるようになっていて、もっと現役の湯治場というか、がん患者の方などが来る湯治場になっているとのことで「撮影は利用者に配慮して気をつけてください」と事前に注意を受け、それなりに心を引き締めてバスを降りる。そのためここでは写真を撮りませんでした。こちらも山あいにある温泉郷でそこここで、ガスが噴き出していたり、マッドポッドがボコボコと吹いていたりと、なかなかにシュールな景観。そんな中、掘っ立て小屋のようなものがあちこちに建っていて、それは湯治の人が利用する岩盤浴用のスペースとのこと。ちょうど講師陣の一人が参考図書としてつげ義春の漫画をあげていたこともあって、彼が描くような最果ての地の印象。先ほどの後生掛温泉と比べると湯治場になっていることもあり、より「つげ義春」感が強い。
さてさて、ここの温泉は硫黄泉だがかなりの強酸性という話で、ぜひ入ってみないとと、温泉に浸かる。湯船がいくつかあり100%と50%と書いてある。ということはと、とりあえず50%の湯船につかってみる。最初は炭酸みたいな感じなのかなと思ったら、入ってじわじわと刺激が来る感じで。日に焼けた肌がピリピリする。特に首の後ろ。傷があったりすると沁みて痛いらしい。幸い切り傷はなかったので大丈夫だったが、上り側に顔を洗ったらおあわわわ!ほえええ。目が!目が!めちゃめちゃ沁みる!なんじゃこりゃと慌てて出てシャワーで目を洗う。ふわああ、驚いたよ。目に染みる温泉は初めて。顔を水で流して気を取り戻してから、今度は100%の源泉にゆっくり浸かってみる。途中ちょっと口に入ったのだが、これが酸っぱい!これが強酸性ってことか!もうお酢で煮てるようなもんじゃん!なかなかに刺激的な体験だった。表には入り方として「初めての時は、あまり長く入らないこと」とあった。いわゆる劇薬ってことかしらね。ちょっと浸かるだけでも効能が味わえそうな強力な温泉でした。ここで各自お昼を済ませてからバスで宿へ。軽く休憩を挟み宿舎の大広間で講師のセッション3連発へ。
ゲスト講演その1:西川智也
映像作家の西川さんは作品制作以外にもNY州立大学で教えていたりキュレーターとしても活動している方。今回はご家族で参加されてて、三人のお子さんたちは早くもキャラバンのマスコットになっている。そんな彼の仕事について語っていただいたのは、主に創作のプロセスの話だった。短編の映像作品を制作する際に緻密なロケハンから、コマ撮りのようにフィルムで一日中写真を撮っていき時間を収めていく方法とか、フィルムを6分割して多重露光していく話(ここら辺理解を超えていてついていけてない)などなど、技術と思想の組み合わさった創作の過程を聞く。技術的な話は正直よく呑み込めなかった部分もあるんだけど、映像作品なのに一枚一枚の写真をどう作るかなんて話を聞いていて、僕がアンサンブルで作るときと似ている空気を感じたんだよね。アンサンブルとかで動きを作って組み合わせたりするときに、一つ一つの動きを作ってまとめて動かしてってやっていくと、丸一日リハーサルして出来たのが15秒、とかそんな感じの時がよくあるのよ。一体いつ出来上がるんじゃと。そんな時のことを思い出しましたね。
ゲスト講演その2:Phillipe Barde
スイス人で陶芸家のPhillipeはジュネーブの大学でも教えている。日本にも何度も来日していてプロジェクトも行なっている。
彼も自分の仕事の話を中心に土と焼き物の関係から地質の話へと広げていく。名前からもわかるようにフランス系の人なんだけど、話し方も全くフレンチな印象で知り合いのフランス人を思い出した。真面目なんだけど茶目っ気があって皮肉屋な感じ。ベジタリアンで割と硬派なエコロジスト。でも住んでいる家は超クールでかっこいい山間のコテージみたいな家(写真見せてくれた)で。「僕は環境保護の観点から飛行機にはもう乗らない事にした!」っていってて「今回どうやって来たの?」って質問されて「それは内緒さ」って煙に巻くあたりも、本当に知り合いのアイツに似てる!そんなお茶目な彼ですが、印象的だったのは「日本の陶芸は考え方がContemporaryだ。なぜなら(日本の陶芸家は)土に形を聞くから」と言っていたこと。ううむ、なかなかに深い話。
ゲスト講演&WSその3:岩間朝子
三人目のゲスト講演は岩間朝子さんという料理をベースにしたアーティストでオラファーエアリソンのスタジオで長年ご飯を作ってきた人。Kitchenという本にもなってて記事を読んだことがあった。
世界が注⽬する料理書に待望の⽇本語版が登場 『スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン Studio Olafur Eliasson The Kitchen』 | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア
レクチャーの後に料理WSという流れだったが「レクチャーが続いているので先にWSをやりましょう」とWSを先に行う事に。お腹もすいてきたので、いいタイミング。
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階下のラウンジに並べられた地元の食材を作った方々と共に紹介し、作るメニューを軽く語った後は「ま、全員で取り掛かりましょう」とカジュアルにスタート。
f:id:junjunscience:20190802174833j:plainf:id:junjunscience:20190802174839j:plainいそいそと作業を始める。そこからは怒涛のキャンプ炊飯に突入。「誰かご飯炊いて〜!」とか「ズッキーニ切って」とか「塩どこ〜?」「ザル足りない!」なんて言葉が飛び交いつつ賑やかにご飯の支度。f:id:junjunscience:20190802192359j:plain同時に大広間で机を並べたりもしているといい匂いがしてくる。炊き上がったご飯をおにぎりにして準備完了。f:id:junjunscience:20190802192411j:plain
f:id:junjunscience:20190802194710j:plainいただきます!
作ったメニューはすべてベジでラタトイユ、キャベツとピーマンのサラダ、カボチャとイモを蒸したものにグリーンのソースをかけて食べるやつ(これ超おいしかった)とかそのほかにもたくさん。それにおにぎり。お腹が減ってたので料理の写真を撮るの忘れた。あらかたご飯を食べた後にのんびりしながら岩間さんのレクチャー。ご飯を食べることと、アートプロジェクトを仲間たちとどう展開してきたかの話が大変に興味深い。食べるって足元にあるからこういう文脈で考えることってなかなかないなあと。夏の夜の風を感じながら、駆け抜けた今日一日を振り返る。
朝から盛りだくさんの内容で頭もお腹もいっぱいに。
続く。