Monochrome Circusとの出会い 最終回〜ダブルビル

「じゃあ、僕もやりますか」と山崎広太さんが立ち上がる。
広太さんはやおら踊り始めた。シアターコクーンで見たアンサンブルの緻密さとはまた違う印象の、衝動をぶつけるかのようなその動きは周りの磁場を一気に変える。まだその当時は、彼が舞踏もやっていたことは知らず、こういう一面もあるんだ、、、と新鮮な気持ちで彼のソロを見守る。Monochrome Circusの緩やかながらもスキルフルなデュオからの流れもいいコントラストになっており。
次にNY在住の盲目の女性日本人ダンサーの番となった。促された彼女は位置につき、ゆっくりとした佇まいで音に身を任せつつ揺らぎ始める。目が見えないということがこれほど繊細さを際立たせるのかと驚くような時間だった。終わってこれもやんやの拍手。一通りゲストのダンスや音楽が披露されたあたりで、坂本さんから「じゃ、じゅんじゅんもそろそろ、、、」と言われ、ここに呼ばれた目的に遅まきながら気づくことになる。ここまで単なるお客さんと思っていたが、そうだよね。なんかやんないといけない空気になってたよな。てか、呼ばれた時点で気づけ!俺。
えー!と思いつつも、なんかやらないわけにはいかないだろうと先日ジャパンソサエティでやった水と油の「スープ」という演目の中で踊ったスープの湯気の踊りを披露。普段着で汗をかきつつなんとか投げ切る。お粗末様でした〜と席に戻ると、隣に座っていた盲目のダンサーから「とても情熱的なエネルギーを感じました」と素敵な感想をいただく。今まで頂いたお褒めの言葉の中でも特に印象の残る言葉となった。
それにしても、、、これだけの人を巻き込んで渦のように場を作ってしまうMonochrome Circusの彼らたちの機動力に、心底舌を巻いた。その頃の自分は作品をいかに作るか、に全力を注いでいて、ダンスを取り巻く環境や活動の多様さには全くと言っていいほど意識がなかった。こんなふうにダンスを届けるユニークさが彼らのキャラクターになっていて、それが一番印象に残った。
「今度京都にも行くよ」「是非是非来てよ!」
帰り際に坂本さん裕子さんとそんな言葉を交わし、深夜の地下鉄に揺られながら帰った。
そんな彼らとの出会いを経て、さまざまに交流は進み、WSに呼ばれたり作品を作ったりともう20年に渡るつきあいになる。お互いに歳をとったけど、まだ活動を続けつつ刺激を与え合っているのは、こういう活動を続けてきて得られた最上のギフトではないだろうか。
そんな彼らを東京に招いての久しぶりの公演は僕もとても楽しみです。
さあ、今日もリハーサル頑張るぞお。
京都のダンスカンパニーMonochrome Circusとのカップリング公演
「ダブルビル」
2月10-11日@カフェMURIUI
公演情報はこちら
Current Prpject Double Bill | junjunscienceweb
Monochrome Circusとの出会い その2

※公演情報は下にあります。
「さ、やりますか」といって坂本さんと裕子さんが立ち上がる。
二人はやおら立ち上がり、向かい合って慣れた手つきでコンタクトをはじめた。
コンタクト(パートナリング)については僕も岩渕多喜子さんのダンス公演に出た時にかなりしごかれてやっていたこともあって、馴染みもあり、ひとしきり見慣れてもいるつもりだった。お手並み拝見といった気持ちだったと思う。二人はゆっくり近づき手を絡めながらコンタクトに入っていくなり、裕子さんがひょい、と坂本さんの肩に乗った。そして肩に乗ったまま流麗に動きが続く。ニコニコしながら、しかもとても滑らかに位置をスイスイを変えていく。首の切り返しとか膝を引っ掛けたりの、経験者にはわかる難しいポイントをなんの途切れもなくつなぎつつ動き続けていく。
「あ、この人たち、できる。」
手始めといいつつ、信じられない滑らかさで動き続ける二人を見て「京都ってこんなヤツいたのか!」と密かに舌を巻いた。東京にはこんな人たちいなかった。もちろんその当時、東京でもそこそこにコンタクトがうまい人たちはいたけれど、みんなこれ見よがしに技としてコンタクトを使ってる感じだったのね。彼らのコンタクトを見た時に、2歩くらい先を行ってると思った。
ひとしきり動いたあと、ホストの方々をはじめ僕らもやんやの拍手の中、公成さんが話し出した。「コンタクトの動きってどこかで繋がってまた分かれて、そんな動きなんだけど、仏教用語の「縁」みたいなものだと思うんだよね。」と、とても流暢な英語でみんなに語りかける。そのときはまだ彼が京大出身だって知らなかったし、ひょえー、英語も話せんのかよ!と単純に驚いてたんだけど、「Buddhist term, ”Yen”」と両手で円を描きながら語った様子をとてもよく覚えている。とても素敵なコンタクトの紹介だし、素晴らしいイメージを与えてくれた気がして、二人のダンスを見終わった後も余韻が広がった。
彼らはピアニカをカバンから取り出し、それを吹きながら楽しげに踊り出した。聞いたことないけど、どこか郷愁をそそるあのメロディは果たしてなんの曲だったんだろうか。彼らが”旅するダンス”と称して世界中で今回のような出前ライブを行なっていると聞いたのは、パーティのお酒がだいぶ進んでからだったと思うけど、その名の通り、世界を踊りながらさすらっていく彼らにとても合っているような、素敵で物悲しいメロディだった。彼らとの出会いは、そんな風に、とても印象的で鮮やかだった。
賑やかな彼らの演奏と踊りがひと段落して、「じゃあ、僕もやりますか」と山崎広太さんが立ち上がる。
以下続く。
京都のダンスカンパニーMonochrome Circusとのダブルビル
2月10-11日@カフェMURIUI
公演情報はこちら
www.junjunscience.net
Monochrome Circusとの出会い
彼らと知り合ったのは、もう20年以上前になるだろうか。
9.11の次の年だったか、水と油でNYに行くときに、ちょうど京都のカンパニーがACCのグラント(奨学金)をとって滞在しているという話を耳に挟み、会ってみようとなったのだった。その頃はすでにメールのやり取り(Eメールって言ってましたね)も普通になっており、割とすんなり共通の知り合いを通じて彼ら、Monochrome Circusを紹介してもらい、彼らも劇場のJapan Societyに来ることになった。
本番直前の舞台上で場当たりをしていると客席に彼らが入ってきて、そこではじめまして!となり、そのまま本番を見てもらう。その後ロビーでようやくゆっくりと話をした。坂本公成さんと森裕子さんをはじめ数人いたような。坂本さん一人分のグラントでメンバーが丸ごと来てるんだよね〜なんて話も聞けて、当時すでに京都がダンス熱いらしいというのは東京にも漏れ伝わっており、そこら辺の情報も色々聞きたかったので、今みたいにSNSもなかった当時、貴重な情報交換だった。元メンバーがNYで生活しているという話も聞き、公演の後何日か延泊を予定してた自分はそこにお世話になることになる。
公演を終えて、NY郊外(確かブルックリンだったと思う)でパートナーと暮らしている「ぼうちゃん」のお家に何日か居候させていただきつつ、街を歩いたり夜は公演を見たりしていたが、劇場で出会った坂本さんから「出前ダンスをやるんだけど一緒に行かないか」と誘われる。出前ダンス?なにそれ?と聞くと「家にお呼ばれしてダンスを見せる会」とのこと。よくわからなかったけど、これも乗りかかった船とついて行くことにする。
最寄りの駅で待ち合わせたのだが、そこには坂本さんと森さんの他に、盲目の女性ダンサー、それになんと山崎広太さんもいて。当時日本から拠点をNYに移してすぐの頃だったと思うけど、日本でもかなり大きな公演を打ってた人だし(コクーンとかでやってたのを見に行ったことある)、密かに驚く。
そんな彼らについていった先は倉庫街にあるアーティスト向けの賃貸住宅のひとつだった。倉庫を改装したアトリエ兼住宅という雰囲気にヤラレつつ、ホストのアーティストカップルに促され、中に入る。倉庫らしく天井の高い間取りで中二階のようなところが寝室とのこと。ここら辺は倉庫街だからゴミの収集が大変なんて話を聞きつつ、ご飯とお酒をいただく。ひとしきり話した後に、さ、やりますか。と言って坂本さんと森さんが立ち上がった。
以下続く。
モノクロームサーカスとのダブルビルです。
公演情報はこちら
www.junjunscience.net
[公演情報]じゅんじゅんSCIENCE+Monochrome Circus ダブルビル

www.junjunscience.net
東京での公演は3年ぶりになります。
京都のモノクロームサーカスとダブルビルです。彼らとは、もう20年以上になる交流が続いていますが、今回は久しぶりの互いのデュオを並べて上演しようとなりました。
コロナを挟んでになりますが、3年も自主公演をしていないと正直「怖い!」のよ。最近のダンス業界(てのがあるとして)がどんな動向かってのも疎いし、そもそもお客さんが来るかどうかもわかんないわけ。どこに向かって公演打てばいいのかさっぱりわからない。昔はそういう荒地を若さで乗り切ってきたと思うけど、そんな向こう見ずなエネルギーは枯れて久しい。ま、力みが抜けたってのが唯一の強みだと思うけど、公演打つのにその抜けって有効なのか!?
なんていう悩みを抱えつつ、本番まで頑張っていきます。
さあ、稽古に行ってくる。
じゅんじゅんSCIENCE+Monochrome Circus ダンス公演「ダブルビル」
日時 2023.2.10(金) 19:30開演
2023.2.11(土/祝) 19:30開演
いずれも開場は19:00
出演 Monochrome Circus(坂本公成 森裕子)
じゅんじゅんSCIENCE(髙橋淳 久井麻世)
料金 2500円(1ドリンク別)
会場 カフェムリウイ
予約 info.junjunscience@gmail.com
新年
あけましておめでとうございます。
とりあえず生きております。
本番まであと少し
だなー。
書こうと思ってた本ブログも全然書かないままで、これはいかんと。
ダンスを作るのと出るのって、回路が分かれてるって話を。
作るのは、見る側としてというか観客としてみたいものを作ってる意識が強い。そんな思いで作るのはやってるんだけど、出るっつーのはこれがまた全然別の回路で。僕はもともとマイムから始めたんだけど、もともと人前に出るって好きじゃなかった。それは出ること自体が嫌いというよりも、自分を好きになれなかったということが大きい。自意識の問題ね。やってみたいけど人前に出るのは、、、という、まあ、極めて一般的でもある感情が大きくて、それとどうにか折り合いをつけてきたわけ。それは、自分にとってとても大きかったと思う。演劇のリハビリみたいなもんで。慣れていくんだよね、人前に出るのも。けど、その自意識が全て払拭されたわけではなくて、常について回ってる。
大体作る作業が先なので先に作るんですよ。もちろん出ながらなんだけど、その時は代役みたいな気分で動いて映像に撮って、って作業を繰り返しながら作品を作っていく。
で、あらかた出来上がったあたりで、じゃそろそろダンサーとして切り替えますかってなるんだけど、この切り替えがまたしんどい。それまでずっと作る側で、自分を作品の中に入れてるんだけど、作り手としては理想の形が見えてるわけね。こんな感じで行けるなーってのが。それを自分が出る人間として担えるかという葛藤が始まる。その作り手の自分が、パフォーマーの自分にダメ出しをする。これがしんどい。やらなけらばいけないからやるんだけど、動いてる最中にも外側からの視点が入ってきて、「これダメじゃん」「全然できてねー」とかの声がかかる。これは客観的にできてるできてないってこともあるけど、自分をどのように受容しているかという自意識の問題がとても大きいんだよね。自分のことが好きであれば、その好きな自分が作品に出ることでポジティブに思えるわけで。長い時間かかって自分の、この動きはまあまあだな、とかこの時の立ち方はいけてるだろう。みたいな、なんとか行ける方向性を見出しつつ出る自分を肯定していく作業なんだよね。正直毎回しんどい。それは普段見る側として気楽に、時に辛辣に他者の作品に対して好き勝手批評していることが、そのまま自分に返ってくる。
ま、それは宿命だと思ってます。一時期は出るのやめて作るのだけやってたんだけど、規模も小さくなり、カンパニーを維持ってのが見えなくなってきてから改めて出ることと向かい合ってる感じ。ま、でも全てのダンサーが多かれ少なかれぶつかっていることで、何も僕に限ったことじゃない。特に自分で作って出るパフォーマーは全て抱えている問題だと思う。
そしてそれは結果的に自分の成長も促してきた気がする。それでも見せたいものを提示しないと、という思いに到達したから。それを作るのに毎回しんどい思いをしているのですが、美味しく食べてもらうための積み重ねと思って頑張ってます。
本番まであと少し。
アミジロウ企画
ダンスとごはんvol.5 ~大航海時代~
@UrBANGUILD KYOTO
12月9日金19:30~
https://fb.me/e/3FwvOnfh5
ダンス小作品集「ダンスとごはん vol.5 〜大航海時代〜」
今年もやってきました京都冬の陣。
コロナになってから、東京での公演はとんとご無沙汰しているが、そんな中毎年開催されているこのイベントが僕らの新作発表の場となって久しい。アミジロウとのこのイベントも8年目に突入。毎年来てくださるお客様も多く、冬の恒例行事となっている。これは何にもまして主催者のアミジロウの継続力の賜物で。正直ここまで続けるとは思ってなかった。毎年冬に京都で彼と会い、彼の踊りを見るのが個人的な楽しみにもなっていて、それぞれの歩みを確認し合い、語り、ダンスをどうやって作っていき観客に届けるかをお互いに考え続けている。
ここ数年は創作の密度が上がってきているというか、手間と時間ががかかるようになっていて動きで精密画を作っているような感じ。長いことやってたどり着いた手法で、最上の時間を紡ぎ上げお届けすべく奮闘している。
今回の共演者もどんな作品を持ってくるか楽しみ。
アミジロウ企画
「ダンスとごはん vol.5 〜大航海時代〜」
⚫︎日程 2022年12月9日(金) 開場19:00 開演19:30
⚫︎会場 UrBANGUILD
京都市中京区材木町181-2 ニュー京都ビル3F
京阪三条駅[6番出口]から徒歩3分、阪急京都河原町駅[1番出口]から徒歩6分
⚫︎出演 じゅんじゅんSCIENCE 【高橋淳、久井麻世】
森川弘和
BC.(森脇彩弓)
アミジロウ
⚫︎料金 前売2600円 当日3100円 ※いずれも1ドリンク付き
WSとセット 4100円 WSのみ2000円
⚫︎ご予約
https://www.quartet-online.net/ticket/1zalvgw
ご来場の際はマスクの着用をお願いします。
・ご入場の際の手指の消毒、検温にご協力お願いします。
・体温が37.5度以上の方はご入場をご遠慮頂きます。
・店内では他の方と適度な距離を保ってください。
⚫︎ワークショップ(WS)開催!
12/8(木)18:30〜20:30
会場:東山いきいき市民活動センター集会室
公演前日の12/8に高橋淳によるWSを開催します。フロアの動きやモノをイメージしたマイム的な動きから踊る身体を楽しみます。ダンス経験不問。身体を動かす事に興味があれば是非ご参加ください。
⚫︎お問合せ:アミジロウ企画
Mail jirometabo@gmail.com
Blog http://amijirokikaku.seesaa.net