旅する地域考|AKIBI複合芸術プラクティス Day 3-1

1日ごとに書こうと思ったですが、内容盛りだくさんで長いのでここから分けます。3日目の前半を。
昨夜はすべてのメニューを終えてから宿の温泉(温泉宿に泊まってるわけだから)に入り、結果3つの温泉を体験した事になる。泊まっている銭川温泉
https://www.zenikawa.net/は川沿いにある一軒家の温泉宿で以前は湯治客を中心に賑わっていて現在は温泉旅館として営業している。泊まったところは湯治の人が寝泊まりする3畳ほどの個室。昔ながらの風情もありつつ、トイレは水洗、Wifiも完備となかなかに快適な居心地。温泉に浸かってがっつり寝たおかげか朝早く起きたので、川沿いを少し散歩。参加者の一人も外に出ていたので、いろいろ話す。秋田出身の人で参加の動機や最終日のプレゼンに向けてなど、川のせせらぎをバックに聞く内容は大変に貴重なセッションともなった。ま、僕は基本話を聞いていただけなんだけど、人に話すってのも考えをまとめるいいチャンスだから、そういうことがあちこちで起こるように狙っているのも企画の意図なのでしょうね。本来の大学ってそういうところだった気が。
朝ごはんの時間になり食堂に戻る。朝ごはんはこんな感じの素敵なご飯でした。
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右上の卵以外はベジのご飯。山菜が美味しかった。すべてこの山で採れたものだそうです。
3日目も盛りだくさんで今日は講師のセッションから
ゲスト講演:芹沢高志さん
数々のアートフェスのキュレーションやプロジェクトをやってきているアートディレクターで水と油時代に何度かお会いしたことが。最近では昨年のさいたまトリエンナーレとかのディレクターも。割とビックネームなお方だが物腰は柔らかい人。
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場所のアートプロジェクトと題して、数々のアートプロジェクトについて立ち上げからどんな風に始めたかなどを紹介。別府のアートフェス「混浴温泉世界」の例を参考に。まず、現地に行き歩いてみることから始めるとのこと。場所に行かないと何もわからない。そして人と話しいろいろ聞いていくところからフェスの輪郭がぼんやり見えてくることなど、示唆に富むお話が。「タイトルに混浴って入れた時に大問題になってねえ。これはどういうことか?っていきり立つ役所の人を前に話をしたんだよねえ」と笑えるエピソードなどフェスを立ち上げる裏側も大変に面白く。そして「辺境が一番面白い。都会には消費しかない。」との言葉にはかなり考えさせられるものがあり。最後に好きな言葉として、この言葉をあげていた。
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昨日のPhllipeの「土に聞く」という言葉や、岩間さんの「まずこの食材を育ててくれた方々へ感謝を」との言葉とも呼応して響く。
朝一のセッションを経て今度は街中に移動。街の古い造り酒屋を改装したスペース「関善」http://sekizen.s50.xrea.com/へ。そこで地元の民話を聞く。迎えてくれたのは鹿角民話の会「どっどはらえ」http://kaduno.in.coocan.jp/kaduno01/dottoharae/dottoharae-h.htmのみなさん。天井の高い古い建物の中がイベントスペースになっていて、そこで民話を。f:id:junjunscience:20190803110200j:plain現地の言葉はもちろん全部はわからないのだが、不思議とニュアンスは感じられ、独特の静けさを感じる。やはり冬の情景を無意識に思い出しながら聞いているからだろうか。こういうイメージ、日本の原風景なんてのは果たしてPhillipeはどう感じるのかしら?後で聞いてみよう。民話を語る言葉もそうだが、終わって語る彼らの言葉も十分に興味深い。こういう方言を聞くことって減った気がするよね。これだけ情報が行き交う世の中になると。けど、聞いていてホッとするのも確かで。僕自身は横浜出身なので方言で育ったわけじゃないんだけど、どこか懐かしさを感じる。
お昼休憩を挟み午後は今回の目玉スポットのひとつであろう尾去沢鉱山へ。
www.osarizawa.jpここは708年に開山されているというかなり古い鉱山で、金銀銅などを主に採掘していたそうで、秋田にはここ以外にもたくさんの鉱山がある。鉱山の入り口は当たり前だがトンネル状になっていて、いよいよ地下へ探検の気分も高まる。
この鉱山で実際に働いていた人が現在ガイドをやっておられて、彼の案内で鉱山入り口へ。
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事前に上に羽織るものを持ってきてくださいと言われていたのだが、入り口から冷たい風が吹き出している。中の温度は一年中一定で13℃とのことで夏は冷たい風が吹き出し、冬は外の空気が引き込まれるそうで、まるで地球が呼吸しているみたいだ。入る前から壮大なスケールを感じる。
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参加者の中には半袖短パンで来た人もいたが、入り口で「こりゃやばい」と悟ったらしく、受付で売っていたレインコートをいそいそと買い込む。中に入るとしばらくは風が外へ吹き出しているがある程度中に入ると風がおさまってくる。こういう感じも独特で興奮する。f:id:junjunscience:20190803135918j:plain
狭い坑道を抜けていくとかなりひらけた場所に出る。f:id:junjunscience:20190803141227j:plain縦に100mくらい裂け目が空いている場所でここで全体の概要を説明してもらったのだが、縦に13本の坑道が通っていて全体の深さは900m、全部の坑道を足した長さはなんと700kmに及ぶそうで、もうなんだか想像がつかない。中はインディジョーンズで見た感じとでもいいますか、ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの中みたいというか。ま、こっちが元なんですけどね。ずんずん奥に進んでいくと途中に広場みたいなのがありそこに祠がある。毎日入る時と出る時に必ず拝んでいったそうです。f:id:junjunscience:20190803142708j:plain
炭鉱とか鉱山とかって落盤の危険があるじゃない?だからここで働く人たちは、15年働けば年金がもらえるという特別な年金手帳を支給されていたらしい。危険手当ってことでしょうね。酸欠なんかも結構あったらしいし。そして還暦も普通は60歳だけど、ここの人たちは40歳だったかな?で祝うらしく。そして旦那が早くになくなる家庭が多いので、奥さんだけ再婚率が異様に高いとか、なかなかにシビアで独特な生活のありようが浮かび上がってくる。正直この中に1日いたら気がおかしくなりそうで、僕にはとても務まらないなあと思いつつ、1時間強の見学で早くも外に出たい気持ちが。
外に出て一休みしたのち、こちらの鉱山で生活していた方の話を聞く。先ほどの民話の会「どっとはらえ」の会長さん。子供の頃にこちらの鉱山の団地?で生活していた話を。田舎ながら鉱山が活発でお金はあったらしく、街で不自由はしなかったそう。学校のブラスバンドにも毎年新品の楽器が鉱山から寄贈されていたなど、昭和の高度経済成長でもあった時期の話をここで聞くことは、今の静かな様子と対比して「夏草や 兵どもが 夢の跡」な感覚を覚えた。
続く