作品と創作の間

「せっかくくるなら何かやってください」
枝光本町商店街アイアンシアターの支配人兼舞台監督のMさんからの提案でショウイングをやることになった。Mさんとは10年以上前に北九州芸術劇場で作った「迷路のつくりかた」でご一緒した地元の舞台監督で、その時は贅沢なことにリハーサル期間中ずっとスタッフがつきっきり。僕も作りながら思いついた美術や映像のアイディアをMさんに提案し、それをうまいこと段取りしていただき劇場でテストを行うなんてやりとりがとてもスムースに行ったことを覚えており、地元ダンサーとの濃密な1ヶ月を経て作った作品は僕にとってとても印象的なものとなった。
そんなMさんからの「なんかやってくださいよ!」を断れるわけがない。ありがたく「やらせてください!」と受けすんなりと流れは決まった。今上演できるフルサイズの作品はないんだけど、ちょうど先月京都で上演した演目がいくつかあり、それを軸に滞在して作業しているマテリアルを紹介するという方向で提案すると「それでいきましょう!」とレス。あれよあれよという間に話が進み、劇場主催の事業となり広報の段取りもすすんだ。このステップの軽い感じも劇場の機動力を感じさせる。楽しみだなあ。まだ作るかは決まってないけど何か出てくるだろ。グダグダになる可能性も見越してワークインプログレスの紹介とし、入場料も気軽な催しを匂わせる投げ銭制にした。
作品を作るとき、リハーサル以前の時間を持ちたいと思っているのだが、日々の生活や仕事に追われなかなかに作り出すことが難しい。結果定例稽古の時間で申し訳程度にとりかかりつつ、そのままリハーサル期間に雪崩れ込むことが多い。もっとぼんやりした時間が必要なんだよね。ちょっと違うな。ぼんやりしつつも思いつけばすぐに試せる準備がある状況というか。公演のためのリハーサルをクリエイションと称してそういう時間にしているが、デッドラインのある中での時間には限りがあり。現在は生活を共にしている麻世と二人での作業が主のため、時間のやりくりはかなり融通が効いているが、それでもそういう時間は意識的に作り出さないと生まれない。
今回試そうとしているのはそういう時間なんだよね。ここ数年参加しているジャズミュージシャンの合宿(AIR SPLASH TOYAMA)は、僕にとってそういう時間になってるんだなと気づいたのが今年。ミュージシャンとセッションできるし、他の人のセッションを見たり聞いたりもできるし。そして一人で作業する時間やスペースもあり。もちろん切羽詰まった状況で何かが生まれるってことも多々あり、そしてそういうモノが得てしてパワーを持つってのも重々承知&経験してるんだけど、もっと意図的に創造的な空白を作ってみたいと思ったんだよね。意識的にぼんやりしに行くというか。そういう時間からもしかして何か方向が見つかるかもしれないし、見つかんなくても空っぽになることが目的だから。普段の稽古やクラスでも、そして日常のあちこちに作品のかけらは落ちているのだけど、こっちがいっぱいだと何も入ってこない。強い刺激じゃなくて些細なヒントを受け止める感受性は、日々のルーティンを一度取っ払って空っぽにすることなんじゃないかと。で、それは個人的なバケーションになりうるなあと思って年末年始の時間を当てることにした。麻世に提案したら「いいじゃん、やろうよ!」と二つ返事でかえってきて改めてそんなレジデンスを実行しようと思った次第。
1月3日にはショウイング(しかも14時から)があるから、正味のところ4日間しかないんだけど、それでも勤め人と二足の草鞋のダンサーには嬉しい、まとまった稽古期間なわけ。宿泊もいろいろ手があったんだけどせっかくだしってことで近くにあるリゾートホテル(大浴場付き!)をバシッと押さえた。結果かなりの出費になったが、そこでうまいこと文化庁の継続支援事業ですよ!2月に映像作品を作る予定なのでそれも併せて事業化して申請した。ま、通るかどうかはわかんないけど、自腹になってもそれはそれ。そのために普段フルタイムで働いてるんだし。金で解決できることは金で。
続く
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