HIROAKI UMEDA

次に見たのは梅田宏明。2作品のプログラム。2.repulsion&3.isolation@HAU2
彼の作品を見るのは始めて。去年の近代美術館のときに同じインスタレーションでパフォーマンスをしたのだが、日程が違い見に行くことは出来なかった。
チケットは早々に売り切れていてかなりの人気者であることがわかる。当日のパンフでもまあ、華々しい活躍が書かれているわけですね。曰く、パリのシャイヨー宮を始めとして名だたる劇場やフェスティバルに引っ張りだこであり、現在はフランスのナンテールでアソシエイトアーティストになっており。まだ30代半ばでしょう?日本の若手振付家で一番の売れっ子じゃないですか。すげえなあ。大いなる嫉妬とともに、なんだか晴れがましい思いもした。
さて作品は男性ヒップホップダンサーを使った「2/repulsion」ってやつと女性バレエダンサーを使った「3/isolation」の2作品。どちらも3人のダンサーを使っており本人は出演せず。何でも10年かけた振付プロジェクトの一環でその3年目とのこと。
白いリノリウムと白い幕だけのシンプルな美術。満員の観客で埋まった劇場が、暗くなっていくと(話し変わるけどベルリンに限らずのヨーロッパの劇場って非常灯消さないのね。だもんで完全暗転にはまずならないのよ。それ意外だったな)3人のヒップホップダンサーがシンプルな黒い衣装で舞台に現れる。そして音とともにゆっくり動き出す。特徴的なのが照明。多分LEDを使って音(ヒスノイズっぽい音のサウンドコラージュ、基本的にビートはある)と完全に同期させている。以前にLED照明のWSに参加したことがあってそのときに思ったんだけど、テクノっぽい音と同期するのにかなり適しているのね。パッとついてパッと消えるし、色は自在だし、ストロボみたいな効果も出来る。それを上手く使って独特のハイパーな空間を作り出している。
ダンサーはほとんどその場で移動せずに踊っている。ダンサーが具体的に移動して舞台上に軌跡を描くっていうより場所そのものが変容し始めるというか、そういう狙いを感じた。ボキャブラリーはヒップホップのダンサーだけあって、アニメーションとポッピングを組み合わせたような感じ。流れとともにだんだん激しくなっていき、それに音と照明のシンクロもヒートアップしていく。で、暗転。
次の作品も暗転を挟みすぐに始まった。舞台は同じく白い中にこれまた黒いタイツをはいたバレエダンサーが入ってくる。こちらは普通の照明を使っているが(矩形の照明が床に薄い格子を描いている。)これまた音とは完全同期。ダンサーはいくつかのシンプルなポジションを取りそこから身体をよじり始める。バレエの身体にヒップホップが浸食していくように。後半少し移動を伴ったりはするが基本的にこれまた位置を変えずに動いていく。これは身体そのものを見せていくということなのだろうね。両作品とも音や雰囲気は同方向で、だからこそバレエとヒップホップの身体の違いが際立って受け取れた。印象に残ったのはバレエダンサーの対応力の高さね。まあ、今のバレエダンサーはだいたいコンテンポラリーもばりばりに踊れるハイブリッドが多いし、ただでさえ競争の激しい女性ダンサーは舞台に立つ時点でかなりのところをくぐり抜けているわけね。だもんで、どうしても比べると(本作品に出ていた)バレエダンサーの強さが浮き彫りになったように感じた。
どちらの作品もエネルギーはあったと思う。音はいわゆる池田亮司っぽいというか音と照明のシンクロはまんまダムタイプだったりするし、ヒップホップのボキャブラリーを経た仕上がりの踊りはぶっちゃけ勅使川原っちゃ勅使川原だなと思ったりはしたけれど。
そこを指摘している批評家は何人もいるし、それは正にそうなんだけど、本人もブログで「これはパクリだと文句を言っている僕の友人がいますが、知ったこっちゃありません。やりたいことを信念を持ってやるだけです。」と言っているように確信犯なのだろうね。それで自分のやりたいことをやり遂げているんだから好き嫌いはあるにせよ、天晴ですよ。思えば、勅使川原フォロワーって結構いてね。というよりある時代のすべての人が影響を受けたといってもいい。当たり前じゃんあれだけ大きな人なんだもの。僕ももちろんその1人ですよ。っていうかそもそも同じマイムスタジオ出身だし。まあ今思えば影響を受けるのも当然だろうし、他からの影響を全く受けないでものを作るなんて人はいないというだけの話なんだけど、昔を振り返ると批評家につぶされた人もいるわけね。「ただのパクリじゃん」って。ま、そんな批判でつぶれる程度のタマだったのかもしれんけど、しかし、そういう言葉が作り手の次の機会を奪うことがあるわけでね。それをはねのけて(様々な人の助けはあるだろうけど)前に進んでいく姿に清々しいものを感じた。俺も人の顔色伺ってる暇があったら、やりたいことをずんずんやっていこうと思ったよ。