Silvester恐るべし

ドイツ語で大晦日のこと。お正月はベルリンにいると言ったら劇場のスタッフからジルベスターすごいよと言われていた。何でも花火がすごいとか。その時はまあ、普通に日本の花火みたいなのがあがるんだろうなと思っていたのだ。
在研で来ている前田さんというダンサーのお宅で年越しそばに呼ばれいそいそと伺う。
地下鉄でクロイツベルクという地域に向かう途中で、かなりの人がロケット花火を大量に抱えているのに気づく。しかし日本のそれとはサイズが段違い。60〜70センチくらいあるのではないだろうか?先についている火薬の部分もなんだろうな、リポビタンDくらいのヤツがついている。何でもドイツでは普段は花火禁止らしいのだが、年末だけは解禁ということであちこちで花火を売っている。
駅で降りて歩いていると角に立っている人がこちらに何かを投げてくる。と思ったら「パーン!」とすごい音。爆竹!そいつは知らんぷり。道理で前を歩いていたおばちゃんが通りの反対側に逃げたわけだ。しかし危ないなあ。
ここらでだんだん様子が分かってきたのだが、どうやらみんな思い思いに花火を打ち上げるという何ともアナーキーな状態になるらしく。戦闘を前に町もなんだか慌ただしい。早くもただ事でない恐怖を感じつつ足を速める。
前田さん宅ではミュージシャンや学芸員の方を交えつつの鍋とお蕎麦。日本から持ってきていただいたお酒も。おいしかった。ミュージシャンの方々のここには書けない業界裏話が刺激的。ちょっと上の世代の話は豪快なエピソード多数。
夜が更けるにつれて花火の音があちこちで聞こえる。それがホントにすごい音で、花火大会を間近で見たときに「ドーン」って太鼓みたいな衝撃がくるでしょ。アレに近い音が町中でするのよ。よくそんなもん売るなあと。
いよいよカウントダウンとなり、町中は花火の音が凄まじくなってくる。窓を閉めていても音と衝撃が伝わってくる。まるで戦争かと。だって、上に向かって打つんじゃなく、お互いに打ち合ったりとかしてんのよ。通る車に発射するしさあ。向かいの窓から発射する人もいるし。真横に発射する人も。それ、攻撃じゃん!こちらの壁や窓にもいくつか当たる。おちおち窓を開けてらんない。

アナーキーな無礼講は30分ほども続いただろうか。その後も散発的に破裂音が続く。途中からはサイレンの音も何回か通り過ぎる。1時半を過ぎてようやく騒ぎも収まりおいとま。
で、帰りの地下鉄がまたすごくて。
ホームでも爆竹炸裂。トンネルなもんで音もものすごい。誰も彼もがビール片手の大混雑。おそらくベルリンに来て一番のラッシュ。東京より始末が悪い。怖いよう。
ようやっと来たぎゅうぎゅう詰めの電車に乗り込むと、車内の酔っぱらい女子5〜6人がすぐ隣でなんと線香花火に火をつけた!あのケーキとかに刺す針金のでかいヤツ。で、「いぇ〜い」だって。馬鹿か!もう頼むから落ち着いてくれよう〜。ほとほとの体で部屋に戻ったが、興奮でしばらく眠れない。明らかに町がおかしかったなあ。リアル「プライベートライアン」状態。
祭りって祝祭とともに、羽目を外すのも大事な要素だとわかってはいるがしかしね、驚いたよ。
ベルリン恐るべし。
元旦の通りには花火の残骸があちこちに。