『FREE SOUL和田アキ子』を聴いている。
ここには、夜がある。
昔、僕が子供だった頃、夜は怖いものだった。9時からは大人の時間で、たまにそれを過ぎて起きていると何だか大人の時間に紛れ込んだようでとても居心地が悪く、布団の中で早く寝ようと思った。
街にも夜の匂いがいっぱいだった。
地元は横浜の僻地だったのだが、たまに伊勢佐木町とか関内や桜木町に家族でご飯を食べに行くことがあった。ご飯を食べてレストランを出るとすっかり街は夜の気配で、大人の匂いがした。何だか子供がいてはいけないような。あの頃の街の空気は今もまざまざと思い返すことが出来る。
そういう匂いがこのCDにある。夜の闇をもっと黒くするような。
今の夜は夜の匂いがしない。
様々なモノがあふれ、大人と子供の世界が互いに近寄り、そして自分も大人になったのだろう。そんな匂いを感じることもなくなっていった。
しかし、大人には大人の時間があるのだ。
そんな匂いを携えたこのCDを聴きながらもっと黒かった在りし日の夜を思い起こしている。