やりたかったこと vol.2

話はもどって今年のお正月。
とある方から、年賀状が届く。以前やっていたクラスに参加していた方のご両親からだった。その方は、ほぼ皆勤賞でクラス開講当初から参加していた女性で、真面目で物静かな人だった。割と筋トレ系のメニューも多いクラスだったのだが、黙々とそのメニューをこなし、様々なワークに熱心に取り組んでいた。たまに開催するクリエイションWSにも参加し、作品を作り発表していた。彼女のソウルを感じるのがその作品だった。普段の物静かな物腰とは対照的にエッジーな作品を作る人で、器用に動く、というタイプではなかったが、シンプルなモチーフを理知的に組み立てつつ一気にテンションで駆け抜ける。そして、持ってくる曲がどれも「これしかない」と思える強さを放っていた。それは曲自体の強さもあるけど、彼女の選ぶ思いもあるのだろう。とにかく選曲が圧倒的だった。WS内でも時々、その人の作り方を例に出し、「これくらい自分のやりたいこと、やるべきことがはっきりしていると、それは見る側にも伝わるよね」と話したりしていた。
今年になって届いた年賀状は、その方のご両親からだった。
その人は数年前の冬の日に亡くなった。
その年の冬のこと。その人がクラスに顔を見せなくなって一月たった。いつもクラスには参加していたし、参加できない時も必ず連絡をくれていた人だったので、おかしいなとは思ったが、モチベーションの変化があったのかもしれない。クラスはあくまで自由参加形式だったため、取り立ててこちらから連絡をすることもなかったのだが、一応声をかけておこうとメールを送ったのだった。すると、すぐに彼女のアドレスから返信が来たが、タイトルに「妹より」とある。「姉は亡くなりました」と、簡潔なメール。こういう時、驚くというより、全てが止まる。考えることも、悲しむこともできず、ただただ感情が止まった。その前の年に自分の父親を見送っており、こういう時のやらねばならぬことを思い起こし、取り急ぎ返事を書く。「お悔やみ申し上げます。今はご家族の皆さまで彼女を見送ってあげてください。」「クラスのみんなも心配していたので、亡くなったことを伝えてもよろしいでしょうか。」の2点だけ送った。クラスの皆様によろしくお伝えください。という返事ととともに許可をいただき、クラスの参加者へ向けてメールを書く。メールを出すとすぐに参加者からの返信でボックスがどんどん埋まっていく。「驚いた」「信じられない」「何があったの」みんなの返信を読み、ようやっと自分の感情も湧いて来た。それぞれ彼女へ手紙を書こうということになった。かなりの文章が集まり、それをプリントし妹さんに送った。妹さんは喜んでくださったが、それきり、妹さんとのやりとりも途絶えていた。
そんなことがあってからもう5年が経っていて、その年賀状は本当に久しぶりの連絡だったのだ。

続く。