Trisha Brown Company@Akademie der Künste

先週の土曜に見にいってきた。アメリカのモダンダンスの代表選手。しかしながら日本での公演は少なくマースカニングハムほどは来ていない。高齢のため今年で公演活動を辞める(教育その他の活動は継続)とのことで是非見なくてはと意気込んだが既にチケットは既にソールドアウト。運良く知り合いが劇場の衣裳に入っていたため、つてを通じて手配出来た。
新旧取り混ぜ4本のミックスプログラムぞれぞれ10〜20分ほど。簡単に各作品の解説を。
Son of Gone Fish/1981
6人の作品。長めのフレーズを少しづつ変えながらずらしながらさざ波のように動きが広がっていく。音楽にとても良く合っている柔らかい動きで腕を振ったりしながら幾何学的に動いていく。フレーズ自体は止めハネ払いが程よくブレンドされていながらとても柔らかい。そしてダンサーがそれぞれ十分に動きを理解し体得していてここちよい。
Solo Olos/1976
白い衣裳で5人のダンサーが登場。音のないままユニゾンが始まる。そのうちにそのユニゾンがほどけカノンになっていき途中一人のダンサーが抜ける。そのダンサーは客席に降りてきてマイクでダンサーに指示を出す。〜リバース、とか〜、〜前にとか〜、向きを変えてとか。指示にあわせてそれぞれが動きを変えていく。途中で明らかに戸惑うダンサーもいてリアルタイムでゲームのように動きを変えていることがわかる。すげえ。それぞれの通り道も複雑に絡み合いつつも最後は元のユニゾンに戻り終わり。ふえええ。
Rogues/2011
男性二人のデュオ。基本ユニゾンだが途中途中で微妙に動きのタイミングや形が変わる。フレーズが単純ながら飽きさせない。あとで劇場の知り合いに聞いたら「昨日は女性二人だったわよ」とのこと。まさに振付けを見せる感じか。
PRESENT TIME/2014改訂再演、2003初演
再び6名のダンス。ジョンケージのプリペアドピアの音にのせたダンス。時折リフトやアクロバティックな展開も入りダイナミックな作品。

本当にただ踊っているだけなんだけど、まずフレーズの面白さと動きの連鎖や絡み合いで見ていて飽きない。同じ動きがそこかしこに出てくるがそれも「あ、あれさっき見た動きだ!」と忘れた頃に出てきて面白い。そしてとっても音楽的ね。っていうか単に音にあわせて踊っているだけともいえる。けどその音と動きの何とも言えないマリアージュと言いましょうか、融合具合は確実に音楽を視覚化しつつ時には音を越えていた。ケースマイケルは本当にここら辺を上手く盗んだよなと。
以前に何回か70年代アメリカのモダンダンスの作家は教条主義的で作品はつまらないと書いたけど、彼女には当てはまらない。どの作品も観客に対して開かれている気がした。作品のあり方に「すごいことをやっているんだぞ!」という脅しに近いような態度(よくあるでしょ?)が感じられないのだ。決して悪い意味でなくいうけど「優しい」んだよね。
それは彼女の資質なのかもしれない。ロビーで上映されていた幾つかの記録映像には彼女がソロで踊ったり有名なロープを使って壁を人が歩いて来るやつなんかもあったけど遊び、遊戯の精神に満ちていて楽しい。そして自身のソロはとてもエネルギッシュでありつつもおおらかで、カンパニーのボキャブラリーの源泉を見た思いが。
それともうひとつ。カンパニーの強さを改めて感じた。長いこと一緒に踊っているのだろう。そして彼らがトリシャのボキャブラリーを本当に良く理解していることが伝わってくるが、それこそが本カンパニーの大きな魅力であると思った。だからこそ極上のワインを味わうような豊穣さに満ちていたのでしょうね。酔っぱらったよお!そしてもう一杯飲みたいなあ。
今年で活動休止とのことでとても残念だが(是非日本公演をしてほしかった)間に合って嬉しい気持と僕だけ見られて申し訳ない気持と半々。つい先週のローザスの公演があれだけ満員かつ拍手喝采だったのだ。トリシャの作品を(お勉強でなく)楽しめるほどに日本の観客のダンスリテラシーも上がっているに違いない。
ああ、日本の観客にも見てほしいなあ。