ベルリンにて

4月から三ヶ月間、ベルリンにあるマイムの学校でクラスを受け持つことになった。具体的にはマイムのコースの卒業公演の担当。ビザの件で一悶着あり、結果的に入国後ビザを取ることになったのだが一応学校側に話を付けてもらっていて何とかなるだろうと。日曜夜ににベルリン着。モスクワ経由のアエロフロート。チケット手配がギリギリだったが故の苦渋の選択だったが心配するほどでもなく、というより至極快適なフライトだった。飛行機もきれいだったし。機内上映も盛りだくさん。これでTegel空港に着いてくれれば言うこと無しなのだが。
月曜は朝から住民登録に行き珍しく話のわかる担当でスムースに処理が終わる。
午後はますださんと久しぶりにカフェで再会。近況報告をしあう。すっかり街に馴染んだ彼から最近面白かった舞台の話を中心に。
その後18時にソフィエンゼーレで投票があるから来てくれとガビに言われ行く。何だろうかと思っていたらベルリンの芸術評議会の(おそらく芸文や文化庁のようなもの)ボードメンバーの選挙、だそうで。日本にもご意見番としてのボードメンバーなんてのが最近設立されてはいるけれどそのメンバーを選挙で選ぶなんて聞いたことがない。しかも投票はアーティストや、文化的な仕事に関わっている人ならば誰でも出来るなんてな。昨日来たばかりの僕もかり出されたわけでね。

入り口で選挙登録を済ませ投票用紙を受け取る。30人くらいが立候補していてその中から部門別に投票者を選ぶシステム。時間になり劇場に入ると司会の人が趣旨説明をし候補者が一人30秒で立候補表明をする。30秒を超えると横の人が「ゴーン」と鐘を鳴らすシステムもアナログでユーモラス。30分ほどで演説が終わり投票する。立候補者はオペラ座の芸術監督とか図書館の館長に始まりインディペンデントなギャラリーのオーナーやただのピアニストなんてのもいて実に様々。投票する側も客席でお酒を飲みつつ。真面目ということと堅苦しさはイコールではないことにも感銘を受ける。やるべきことを楽しんでやるというお手本を見せていただきました。
う〜ん、大人だなあ。日本でこういうのやるとやれ公平性がとか、やれズルをするとかいろいろあって無理なんだろうけど、大人の民主主義を見たような気がした。それぞれモラルを持ってこういうことが自立的に機能しているのはそれぞれが「これはやったらあかんやろ」という意識を高く持っているが故なのだろう。昨今日本の芸術に対するサポートで「誰がそれを決めるのか」というオーソライズの問題が大きくいわれているが選挙したらええやん!と強く思った。たとえそれがポピュリズムであろうと少なくとも制度としてはオープンかつ公平で投票する側も立候補する側も「パブリックな意識」を育むのでは?と思った。
終わってシアターハウスのガビと再会しビールを飲みながら手短に近況報告をし、その後また別の知り合いのパーティにお呼ばれ。
朝から晩まで動き回りましたが充実した一日でした。