Gob Squad

コレも前から見たかったカンパニーで日本に来日もしてるんじゃないかな。
彼らは演出家やビデオアーティストの集まりで日本でいうとダムタイプのようなスタッフ集団というかチームですね。設立は結構古く94年からということ。ウェブサイトがシンプルながら充実していて今自分のサイトのリニューアルをしているのですが大変参考になります。その人たちの新作ね。
Gob Squad Western Society
舞台にはスクリーンがあって上手(向かって右手)にはスタッフのブースがある。中央にはソファやテーブルが散乱している。
スクリーンに数字のカウントダウンが映し出され3、4人が舞台に出てくる。数字はどうやら紀元前から現代までカウントダウンをしているらしい。登場人物は皆全裸。一糸まとわず。文明以前の世界を描くかのように。そこから一気に現代になり、パーティっぽいコスチュームをつけソファやテーブルを室内のような配置に換えていく。登場人物はマイクでいろいろ喋りながら対話をしていくんだけど、それをビデオで撮って奥のスクリーンに映している。喋っている人のバックに大きなその人が映っているのが見える感じ。
太った女性が観客をいじりつつ縫いぐるみを投げる。それを受け取った人は舞台に出てくるという流れ。皆きゃあきゃあいいながら縫いぐるみを受け取ったりそれを誰かに放り投げたり。
6、7人の観客が舞台に出てくる。日本だとまだこういう空気は難しいかな。HAU2の舞台と客席の距離のない感じもこのやり方にあっているのでしょう。みんないい雰囲気でカジュアルに舞台の上に。
舞台に上がった観客はヘッドフォンをつけさせられる。そして中央の室内のセットに。奥のスクリーンは室内のセットのイメージが映し出されているのね。と同時にセットの前に大きなボードスクリーンがおかれる。でそのスクリーンの直ぐ後ろにカメラがあるのでしょうね。室内に座った彼らがそのスクリーンに映し出される。ちょっとわかりづらいので写真とってみた。こんな感じ。iPhoneが手前のスクリーンね。

でわざわざそのスクリーンで裏の人たちを見るという構造になっているのよね。
そこでヘッドフォンをつけた観客はそこから指示を受けているらしくそれぞれ家族らしい振る舞いを見せていく。父や母、子供やおじさん等何となくそうであろう振る舞いをおぼつかない動きで演じていく。
それがどことなくカギカッコつきの「家族」を浮き彫りにしているようで不思議な空気が漂い始める。その中に本来の演者(役者ね)が入っていきレポートをしていく。レポートといっても語るのは自分自身の家族の話ね。曰く若い頃に両親が離婚したとか自分はこういう男性が好きだとかいつも怒られていたとか。ほぼ全編英語だったので理解も問題なく。時々ドイツ語が交じるけどそれも何となく何を言っているかわかるように作ってある。
ヘッドフォンをつけた家族役の観客たちはパーティをするように踊ったりしつつ、時々そのスクリーンの外に出て外からスクリーン内の演者を眺める。
これ、一見なんでこんなことしてるんだろうと思うけど、メタな視点を構造的に舞台に持ち込もうとしているのね。観客に役を演じさせるなんて手法や、直接見せずにあえて撮影してそれを映すなんてのもまさにそう。たくさんの映像に囲まれて現実って感覚が希薄な現代を描いているとでもいいましょうか。そして観客が演じることによって「うまい演技」を見るのではなく誰でもが知っているはずの家族のありようという「構造」を見せられるというのも大変に理知的なやり方だなと思った。
映像を舞台に使うってのは昨今当たり前ではありますがかっこいい映像表現ってもう見慣れていてね、舞台でそういうのみても「それ映画でやればいいじゃん」とか「youtubeで見たことあるなあ」とか思ってしまうんだよね。それに映像の方が強いからパフォーマー見なくなるしね。だもんでなぜ舞台で映像を使うのか。ということがより問われることになるのですが彼らはそこら辺をまさに考えている気がした。
いやね、舞台のルックはそんなに派手なもんでもないのですよ。スクリーンも手で動かしているし「バシっ!」と決まるかっこいい絵があるわけでもないし舞台上のカメラも役者が動かしているのでしっかりした絵とはいいがたい。そもそも観客がヘッドフォンで操作されてる様子を見るなんてかっこいいとはほど遠いしね。基本ユルダラなテンポで展開されるその舞台はしかしながら見る側それぞれの家族観を密かに問い直させる力に満ちていた。

話は変わるけどこういう種類の舞台ってベルリンに多いのですがこれ、一種のバラエティ番組のような感じなのかなと。テレビでいうとドラマ以外にもバラエティやクイズ番組なんてのがありそれが情報番組になっていたりと複雑で多岐に渡っているでしょ。それがドイツでは舞台で起こっているといいましょうか。出演者も単なる役者ではないパフォーマーというか、舞台「タレント」みたいだなと思ったりしてね。
そしてこの種の作品はスタイルそのものがある種の問いかけになっているんだよね。「舞台ってなんぞや」というね。収まりのいい答えだけでなくそういった問いかけのある舞台をもっと見たいと思わせてくれた作品でした。