永ちゃん

先週のことだったかな。
日曜に新宿に向かう電車に乗ると、真っ白のスーツを着た男の人が。
傍らには女性が寄り添うように立っていてこれまた白のロングコート。二人とも手には「E・YAZAWA」のバスタオルをきちんとたたんで持っている。おそらくこれからコンサートに向かうのだなと気付いたが、その男の人のスーツの着こなしにちょっと見とれてしまった。
正直背もそんなに高い人ではなかったし決してイケメンというわけでもない。おそらく50過ぎで建築業とか植木の職人さんっぽい顔つきでね。そんな人がドレスアップしてコンサートを楽しみにいく、という瞬間に出くわして、なんだか「いいなあ」と思ったのね。
きれいな白いスーツの下には黒いTシャツを着ていて、足元はコンバース。それをいかにも「カッコつけてます」風なアティチュードでなく、あくまでさりげなく着こなしている。すべての文化がカジュアル化という名の低きに流れ、ドレスダウンとは名ばかりのイージーモードに向かう中(そもそものスタンダードがもはや存在してないわけだけど)「着飾る」という行為を目の当たりにして「かっこいいなあ」と思ったのな。
ココがベルリンならフランクに「Sehr schön!」なんて声がかかるところだけど、そこは人目が気になる恥の文化の日本ですよ。乗客も見て見ぬ振りで、僕のその呪縛に飲まれ何も言えないのな。目が合ったら(ナイスです!)とテレパシーでも送ろうと思い、その人のことを見ていたのだけどあまりじろじろ見ても失礼じゃない?この思いを何とか伝えたいなと思いつつも電車は新宿に着いたのな。う〜ん時間切れかと思い電車を降りると彼らも新宿で降りたのな。ホームの人ごみのおかげで自分の緊張も解け、ココで言わないと後悔する!と改めて思い直し、思い切って
「かっこいいです!」
と声をかけたのさ。その人は明らかにびっくりした様子だったけど「あ、あ、どうも」と照れつつも返してくれた。ちょっとびっくりさせてしまったけど思い切って話しかけてよかった。
その日一日幸せな暖かい気持ちでしたよ。
いいものを見たな。