SUSANNE LINKE

さあ、後半戦に入って参りましたTanz im August。

ちょっと気休めに、部屋から見た町の風景を。
今日の演目はKAIKOU/SUSANNE LINKE
KAIKOUって邂逅だよねえ。こういうジャポネスクというか日本趣味って一時期はやってたけど、こちらとしては何ともくすぐったいというか片腹痛いというか。やっている方は特に考えてないのでしょうけどね。選ぶ単語がちょっとスピリチュアルな感じがするのが多いのも何故なんでしょうか?
今年のパリ市立劇場のプログラムで谷口ジローのマンガを舞台化したヤツなんてのは逆に興味あるけど。
ま、そんな感じでちょっと警戒しながら見に行った。
会場はRADIAL SYSTEM。ここは元浄水場だった施設でサシャワルツの本拠地として劇場になっている。川沿いにあり、外にはカフェもある。ベルリンにしてはちょっとアッパークラスな雰囲気があるかな。客席は3〜400ほどかなあ?大きなレンガ造りの中に客席が仕込んである。一番奥の席だったけど見やすかったですね。
3人の男性ダンサーとスザンネ本人が出る本作は、スモークに包まれたなか始まった。四つん這いで貼ってくる男性ダンサーが立ち上がり走り出すと銃声が鳴り、一人が倒れる。また銃声あり、もう一人が倒れる。ダンサーは幅の太いパンツを履いていて、上半身は甲冑みたいなデザインのシャツを着ている。その中の一人は長い髪を振り乱して踊っている。しばらくすると男二人がまるで戦いのような舞を踊る。スザンネリンケは途中途中で出て来て男と関わったり関わらなかったり。最後に彼女の短いソロで終了。
書いていて改めて思うけど、全体的にちょっと趣向が
昔学校にまわってきたお芝居
っぽかった。「撃たれて倒れる」なんて描写は子供にも分かりやすいし、音楽も叙情的といえばいいけれどなんだか安い映画のサウンドトラックって感じで、状況を説明するような使い方をしている。森の中っぽい感じとか、悲しい感じとかさ。スモークで照明がカッコイイのも逆にかっこ悪かったし。それがダンスの文脈でそのまま舞台にのっかっていたので「えっ?」と引っかかってしまったのよ。それに、衣装と雰囲気が何かに似てるなあと思ったら


ロード・オブ・ザ・リングじゃねえ?髪の長い騎士とか出てくるし、あたりは森っぽいし、戦いはあるしさ(笑)。それ+日本風味って感じよ。それ、ぶっちゃけアニメのコスプレじゃん。そう考えるといちいち納得いって見ているこっちがちょっと恥ずかしかったぞ。
もちろんこれは僕がもはや素人目線では見られないのもあるよな。舞台とか全く見たことない人だったら、筋やキャラクターがよく分かって面白い、となるかもしれんし。しかしこちとら中辛程度じゃ物足りないゴリゴリのジャンキーなわけでね。見ながら改めて思ったんだけど、ダンスを見る時のワクワクって、「何か今まで見たことのないものを見たい」ってことなんだよな。すべて手に取るように分かってしまったら面白くない。「ええ?なんだこれ!?」というような驚きや、「こんなやり方あるのか!」みたいに自分の価値観を壊してくれるものに出会いたいから、リスクの高いコンテンポラリーダンスなんてものを見に行くわけでさ。もっと強い酒を!ってなもんよ。
ま、だからこその「大事故」も多いのですが、その事故の多さと衝撃の強さはおそらく比例しているわけで。ま、ハイリスクハイリターンですわな。そして見た公演が「事故」だったかどうかは、観客それぞれが決めることなのも大前提でね。
ま、僕が日本人ってこともあるのでしょうね、全体としては残念ながら好みではなかったのですが、ラストのスザンネリンケ本人のソロは、良かった。手を中心とした踊りながらステップを踏みつつ移動していく彼女のダンスは、固有の時間を持っていたように感じた。ちょっとあたりが「しん」となったし。結構なサイズの劇場の空気をまだまだ(御年70歳近いと思う)掌握できる本人のダンスを見られただけでも良し。と思えた公演でした。