見る前に跳べ

日劇場となった会場での稽古が続く。しかし公演はもうひとつの作品とカップリングのため時間を分割しての使用になる。これがなかなか調子が狂う。ダンサーの疲労もおそらくピークに来ているのだろう。申し訳ないと思いつつも指示はバンバン飛ばす。しかしこれくらい乗り越えてくれよ、とも思う。せっかく本番というバンジージャンプを、どうせ跳ぶなら高いところから跳ばせたい。
これは通過儀礼なのだ。バンジージャンプも全員が生き残るわけではない。一人で砂漠を彷徨する儀式も死の危険と隣り合わせだ。しかし生命の危険をかけて乗り越えなければならないのだ。生温い覚悟では観客の奥深くの意識とは出会えない。これからの作業のためにも是非このイニシエーションを乗り越えてもらいたい。
僕にできるのはバンジーの台を作って、てっぺんにみんなを連れて行くところまで。






下を見るな。見る前に跳べ。